仕事漂流

仕事漂流
[著]稲泉 連
価格:1,680円(税込)

まえがき

本書は「転職」という一つの切り口から、八人の「働く若者」を取材したノンフィクションである。

彼らはみな1979年生まれの僕と同世代で、いわゆる「良い大学から良い就職」を成し遂げた。

1990年代中頃から2000年代前半にかけて――「就職氷河期」に企業社会への第一歩を踏み出し、「ロストジェネレーション」とも呼ばれるようになった彼らは、かつて信じられていた「価値観」に照らせば、就職に成功した「勝ち組」とされる人たちだろう。ただ、彼らは働くことに対する社会環境や、企業側の求める人材像が大きく変化していく中で、社会人としての最初の日々を送った。そして、一度は就職した企業を辞めることとなった。

人が転職という道を選ぶのはどのようなときだろうか。

上司とそりが合わない、やりたい仕事ではなかった、給料が安い……挙げられる理由はたくさんある。しかし、ときに一言で語られてしまう「理由」のすべてには、この仕事は果たして自分の人生を良い方向へ導くものだろうか、という不安が含まれているに違いない。また、それが自らの人生をどのように歩み、どのように設計していくかという切実な問題だからこそ、「理由」の中には彼らのこれまでの人生における重要な経験や考え方の多くが込められてもいるはずだ。

かつて一人の大学生だった彼らは、いまという時代にどのように企業組織の中で働き始め、そして働く自分自身の思いにどう折り合いをつけ、一人の「社会人」として成長を遂げていったのか。時代の波の上をどのように漂流し、自分だけの着地点を見つけていったのか。

この本は、その軌跡を描いた八篇の物語である。

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