人が人を裁くこと。ときには死刑判決を選択しなければならない事件の重さ――。実際に人を裁くことは想像以上に大変なことだ。誤判はないだろうか。死刑ではなく無期刑でよいのではないか。考えだせば悩みは尽きない。その大変な作業を、今まで私たちはプロの裁判官に任せてきた。判決があますぎる、あるいは厳しすぎる等々、遠くから自由に批判してきたが、今度は自分たちがその裁判をする側の一員になる。
「裁判員制度」が施行される。制度の是非について施行が決まった現在でも、議論がなされている。選ばれた裁判員は不安におそわれたり、あるいは責任感で身が引き締まる思いだろう。
重大な刑事事件に国民の意見を反映することで、刑事裁判がより民主的な充実した制度になるのか。裁判員制度は、司法の場において日本人が民主主義を体現していくことができるのか、重要な試金石となる。
本書は、裁判員制度の是非、制度の重要ポイント、そして想定される具体的事案のなかでの問題点を平易に説明したものである。執筆は、私の所属する法律事務所の弁護士が議論しながら行った。のちに構成や刑事法の問題点は、司法研修所で所付を担った中重克巳弁護士の手を主に煩わせた。法律の専門家の著した内容であるから、刑事法の基本概念の解説もされているが、「人が人を裁く」ことの重さを知っていただければ、それ以上に望むことはない。
実務に忙殺され筆が遅れがちな執筆者に、辛抱強くつきあってくれた、私が初めて著作をものしたときからお世話になっている旧知のプレジデント社書籍編集部の山形佳久氏、推薦文の言葉を気持ちよく書いてくださった、世界一忙しい司会者のみのもんた氏に、著して感謝の意を表したい。
平成21年4月
裁判員制度施行を控えて
弁護士 山田秀雄