なぜシリコンバレーではゴミを分別しないのか?

なぜシリコンバレーではゴミを分別しないのか?
瀧口範子
ほか
価格:1,500円(税込)

まえがき

モノを開発することには、おのずと楽観性が包含されていると聞いたことがある。モノをつくるから希望が生まれるのか、希望があるからモノがつくれるのか。
「人々の生活を便利にしたい」「前代未聞のものを生み出したい」「金儲けをしたい」「世界を変えたい」。何でもいいが、ともかく「いいこと」が起こるのを 信じて、シリコンバレーの人々は日々いろいろなものを生み出している。時に楽観性が行き過ぎて極端に走り、やけどを負うこともあるが、それでも決して飽き ることがない。
 私が1996年にここへやってきて十数年が過ぎた。シリコンバレーはその間にドットコム・バブルを迎え、それが崩壊し、今度は住宅バブルが起こり、そう こうするうちにテクノロジー業界も盛り返し、それと一緒にグリーン・テクノロジーも芽生え、はたまた住宅バブルが崩壊し……と、まるでジェットコースター のような上下運動を繰り返してきた。
 そして、商機と景気の動きに合わせて、多くの人々がこの地域に移り住み、そしてまた出て行く。そのさまはまるで、世界の満ち潮と引き潮を一手に引き受け ているかと思うほど、落差が激しい。ここは定住の地というより、チャンスの土地だ。世界中から腕試しにやってきて、負けたなら、さらに腕を磨いて出直して くる場所なのだ。そして、たとえ負けてもいつも次にかける希望がある。
 この本は、2006年11月以降、日経パソコン オンラインで書いてきた週刊コラム『シリコンバレー通信』に加筆し、さらに書き下ろし原稿を加えてまとめたものである。時に興奮しながら、また時にはうん ざりしながら、そんな楽観性が見せてくれるさまざまな側面を、クロニクルのように綴った。
 ここへやってきた当初は、「起業精神」というひとつの物語しかシリコンバレーに見いだすことができなかったが、年月を経るにつれてシリコンバレー人の楽観性は生活のすみずみにまで及んでいることが感じられるようになった。
 生活だって実験の場なのである。ゴミの処理ひとつとってもしかり。「やってみましょう。ダメならば、やりなおしましょう」。そんな精神がここにはいつも あって、その向こうには「そうやっていろいろ試行錯誤を繰り返していれば、きっと世の中はいい方向へ進むはずでしょう」というおみごとな信念がある。
 信じること、執拗さ、楽観性の大切さこそ、私がシリコンバレーから教えてもらった宝物だと思っている。

Facebookに投稿

最近チェックした商品