元気の秘密は「超回復」

元気の秘密は「超回復」
[著]田中誠一
[著]矢澤一良
価格:1,470円(税込)

はじめに

 このところ、「メタボリックシンドローム」という言葉を、目や耳にしない日は一日としてない。この、いわゆる“メタボ”は、いうまでもなく脂肪が、体に不健康なかたちでつきすぎた状態のことだ。深刻な健康被害を招く可能性もあるということで、中高年の方のみならず、美食・飽食の時代、そして運動不足の時代を生きる万人に、等しく気がかりなテーマとなっている。
 スーパーマーケットやホームセンターでは、体重だけでなく体脂肪も計れる「体組成計」も数多く売られている。街のあちこちにスポーツジムが見かけられるようになり、市民マラソンをはじめとするスポーツイベントも盛んだ。このように、健康への気づかいは年々増してきている。まさに「一億総ヘルスコンシャス」時代である。
 健康のために、スポーツに励み、食事をコントロールするのは結構なことだ。ところが、その道の専門家の目から見ると、時折心配なことがある。誤った情報や偏った知識をもとに、思い込みで「健康によかれ」とやられていることも多いからである。健康によいはずのせっかくの努力が、じつは逆効果、むしろ「危険な行為」となっているケースも見かけられるのだ。
 たとえば、体脂肪。マラソンの一流選手などは、極端に体脂肪率を少なくした体で競技をしている。スリムな体にあこがれる人も多い。しかし、「勝負」という視点から、「健康」という視点に目を転じると、むやみに脂肪を落とすことは健康を害する恐れもある。脂肪は、人間の生命活動に欠かせないものだ。「なければ、ないほどよい」というものでは決してない。
 また、疲労やストレスも単純に悪者扱いしてはいけない。人間の体は(体の一部である頭脳も)疲労やストレスを適度に受け、それを乗り越えることで強く丈夫になっていく。スポーツの練習は、人間の体に、意図的に疲労やストレスを与えるものだとさえいえる。この疲労やストレスなくして、人間は強くならない。大切なのは、その疲労やストレスを、自分にふさわしいものにコントロールすることだ。
 これにまつわる話は、本書でキーワードとする「超回復」とからめ、本文でくわしく解説していくつもりだ。が、「ストレスが悪玉ではなく善玉」などというと、一般の多くの方は最初、みな驚かれる。
 先に、「思い込みで、健康によかれと……」と書いたが、この本では、その道の専門家の一人として、運動・スポーツにまつわる常識の非常識、一般の人が意外に思われるような話を、できるだけ数多く披露していきたい。また同時に、「競技スポーツとは、どのようなものか」「健康のためのスポーツは、どういったものか」「運動・スポーツとの正しいつきあい方」なども、あわせて解説していきたい。
 丈夫で健康な体づくり、その源は「運動・栄養・休養」の三点セットであることは、今も昔も変わらない。ただ、そのメカニズムと実際の運用については、最近の運動生理学によって明らかにされたことも数多い。ここでは、そうした最新の情報、それにトップアスリートを長年指導し、現場を間近で見てきた私自身の経験などを交え、「おもしろくてためになる」健康本を、元気に日々を過ごしたいみなさまにお届けできれば幸いである。

2008年5月
田中誠一

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