宮里藍ほか数々の トップ・アスリートを育てたウォーキングとは!? メタボリックシンドロームなどの現代病を改善し、脳を活性化する、田中式「ウォーキング・エクササイズ」を全公開。
世は健康ブームである。健康産業や健康食品がわが世の春を謳歌している。
週末ともなれば、ゴルフ、テニス、野球、ランニング、スイミングと、健康を目的に汗を流す人が日本中にあふれる。テレビや雑誌では、健康やダイエットに関する特集が繰り返し組まれている。
メタボリックシンドロームが生活習慣病の原因であることを、厚生労働省が発表すると、いっそう健康熱は高まった。肥満への恐怖である。
ウエストが85センチ以上ある、私は90センチ以上だわ――やせて、健康な身体にならなくては、というわけだ。
だが、あなたがやっているスポーツやダイエットは、ほんとうに体にいいのだろうか?
――実は、健康になるどころか、逆に不健康になっているのである。
「そんな馬鹿な」と思われるかもしれない。しかし運動生理学からいえば、やり方によってはスポーツやダイエットは100パーセント健康にはよくない、とも言えるのである。
世の中には、間違って信じられているスポーツ神話や健康についての迷信、誤解が、今でも数多く流布している。
スポーツをやると健康になるというのも、そのひとつである。一般的に考えられているスポーツと健康づくりとは、まったく性質を異にする運動なのだ。
(中略)
最近になって多少理解が深まってきたとはいえ、ウォーキングもまだまだ誤解されている。
多くの若者は、「ウォーキングなんて、年寄りがやればいい」と歩きを馬鹿にする。これも大きな間違いである。ウォーキングは健康にも、スポーツにも、もっとも優れた効果を発揮してくれる運動なのだ。
メタボリックシンドローム、さらには生活習慣病の予防と改善に、ウォーキングはどんな運動よりも最大の効能をもたらしてくれる。有酸素運動であるウォーキングは、体脂肪(内蔵脂肪)を燃焼させ、酸素供給量を増大させる。酸素を運搬する赤血球の量が多くなり、血管が拡大し、心臓の弾力性が高まる。
その結果、肥満(内臓脂肪型肥満)を治すので、糖尿病、脂質異常症(高脂血症)、高血圧症などが改善され、心筋梗塞、狭心症、動脈硬化症、脳梗塞、脳溢血などの生活習慣病を予防するのに著しい効用がある。
肥満に悩んでいる人にとっては、食事を制限するような不健康なダイエットではなく、ウォーキングこそ、いちばん効果的なダイエット法であり、健康法なのだ。
さらに、肩凝り、偏頭痛などの不定愁訴や腰痛の悩みを解消し、筋肉や骨を丈夫にする。ウォーキングは大量の酸素を脳に送り込むので、脳の働きが活性化するから、ボケの防止にも役立つ。しかも、知的作業能力が格段に向上する。
(中略)
スポーツをする者にとっても、ウォーキングはケガやスポーツ障害が起こりにくい身体をつくる。そしてスキル(技能)が格段に向上する基礎的体力づくり(フィジカル・トレーニング)として、もっとも重要なトレーニングなのだ。
私はこれまでに、数々の著名な競技者をコーチする機会に恵まれた。なかには、世界チャンピオンになった者もいる。いずれの場合にも、私はウォーキングからトレーニングを始めている。
詳しくは本書をお読みいただきたいが、数年かけて彼らのウォーキングを完成させている。徹底的によい歩き方をつくることにより、信じられないほどの力が発揮される。
ウォーキングは健康にとっても、スポーツにとっても、いいことずくめなので驚かれるかもしれないが、これらはすべて実証されているのである。だから、「ウォーキング革命」なのだ。
本書は、世間に流布している間違った神話や誤解を、運動生理学、トレーニング理論、コーチング理論などから分析し、どういった運動が健康な身体をつくるのかを明らかにした。
そして、ウォーキングの隠された偉大な力に照明をあてた。メタボリックシンドロームをはじめ現代病のほとんどが歩かなくなったことに起因していることを考えれば、ウォーキングが「特効薬」であることは間違いない事実なのである。
本書の目的は一人でも多くの方に、楽しく、実践的に、科学的に、健康な身体をつくっていただくことにある。スポーツ愛好家の方にも、運動嫌いの方にも、若年・中年・高齢者のすべての皆さんのお役に立つことを、心から願ってやまない。
(──本書「はじめに」より)
[著] 田中誠一(たなか・せいいち)
1935年、東京生まれ。1958年、東京教育大学体育学部卒業。現在、浜松大学教授・健康プロデュース学部長。東海大学名誉教授。日本プロゴルフ協会学術委員。トレーニング理論、コーチング理論、運動生理学など、スポーツサイエンスの第一人者。東京オリンピック、モントリオールオリンピックのコーチを務める。プロ野球の長嶋茂雄、ハンマー投げの室伏重信、F1パイロットの中島悟、ボクシングの井岡弘樹、大相撲の久島海、ゴルフの金井清一・塩谷育代・宮里藍など幾多の名選手を指導する。大学教授の傍ら、新聞・ラジオ・雑誌等のマスコミをはじめ医師会での講演など幅広く活躍中。主著に、『1分間ストレッチング』(経済界)、『田中誠一・金井清一のゴルフ、一気に開眼』(プレジデント社)ほか多数。














